大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)1501号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人相沢登喜男の上告趣意第一点は法令違反、事実誤認の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない(そして、本件物品の物品税課税標準価格算定に関する原判示は正当であり、原判決の右標準価格の認定に誤りがあるということはできない。)。同第二点は判例違反をいうけれども、原判決は第一審判決判示第五の所為を一個の物品税逋脱罪として処断していること判文上明白であるから、所論は原判示に副わない主張であって、前提を欠くものである。同第三点および同第四点は訴訟法違反の主張に過ぎず、上告適法の理由とならない(なお、物品税の納期日は物品税法一〇条の定めるところであり、物品税逋脱罪はその納期日の徒過によって既遂となるものと解すべきことは、昭和三一年(あ)第四七号、同年一二月六日第一小法廷決定、集一〇巻一二号一五八三頁に判示されているとおりであるから、第一審判決が判示第二において特にその時期を明示しなかったからといって、理由不備の違法があるとすることはできない。この点に関する原判示は右と説示を異にするが如くであるが、第一審判決に理由不備なしとした点においては正当である。また、移出価格と課税標準価格とはそのいずれかを判示すれば他は算数上自ら判明する関係にあるから、第一審判決が課税標準価格を判示している以上、移出価格は自ら明らかであり、特にこの価格まで判示しなかったからといって、理由不備の違法があるとすることはできない。なお、第一審判決判示課税標準価格はその挙示する証拠によってこれを算定認定することができるから、同判決には論旨第四点のいうような違法もない。)。同第五点は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例